90年代初め、僕が入学した大学にはピカピカのワークステーションが導入されていた。
黒くてかっこいいピザボックス型の筐体に、これまで見たこともない洗練されたGUI、美しいフォント、統合された開発環境とドキュメンテーション。これらを備えたコンピューターが学内ネットワークに数百台配備されていた。

僕は程なくその環境にハマり込み、勉学そっちのけでプログラミングという名のおもちゃ作りに没頭した。

NeXTStepと言う名のそのコンピューターOSが、今のMacやiOSの原型である。

そういう意味で、jobsは僕がこの道にはまり込んだ諸悪の根源であり、物作りの下にある見えない部分のデザインの美しさとは何かを教えてくれた心の師匠でもある。

90年代は結局鳴かず飛ばずだった師匠のAppleに戻ってからの成功の基礎には、この時代に作り上げた理想型に近いデザインと実装がある。
それらを同時代に共有できたこと。それらが師匠込みで後の世に評価されたことを嬉しく思うとともに、師匠の冥福をお祈りする。