[A] 3年前にナニカのアニメを見て吐き出したテキスト
アニメ・・・というか物語の楽しみは「そのフィクションの中のリアルにどれだけ共感できるか」にかかっとるワケですよ。

魔法少女リリカルなのはが普通の小学3年生なのも、ハーレムアニメの主人公がぱっとしない普通の高校生なのも、隣に引っ越して来て主人公に好意的な少女が実は幼馴染なのも、全て、より多くの視聴者に共感してもらうために、より共通のリアルをフィクションの軸足として使ってるワケであって、「成績優秀でイケメンでみんなに優しく先生にも信頼された生徒会長」なんて、地球を救うヒーローじゃなくて悪者に決まってるわけですよ。こちらはワイドショー的に。

Cowboy BeBopでは、位相差空間ゲートなんてテクノロジーが開発されて、人類が宇宙にその足場を築いて数十年の時が経ったSFな世界の話だってのに、その中に生きる人間ときたら「それどこの昭和?」ってくらいリアルなの。
ガニメデ慕情は別れた男と女のリアルだし、ゲイトウェイ・シャッフルは狂信的な宇宙生物愛護団体の(我々一般人の側から見た)リアルだし、物語の背景では半分呆けた爺さんたちが噛み合わない自慢話を延々繰り返すし、もう、人間臭いリアリティが満載なわけですよ。
どんなにフィクショナルなテクノロジーも、技術がライフスタイルに与えた影響まで含めて、人間臭さに充ち満ちたリアリティで描き込まれると、あぁ、そんなテクノロジーが実現したんだ・・・と納得させられてるわけですよ。

物語を作るときに、何をリアル側の軸足に置いて何をフィクションにするかは自由ではあるけど、その軸足になるリアルが子供臭い世界観に基づいてたり、地球を愛そう・・・みたいな宗教臭い考えに捕らわれてたり、逆に全く知らない世界のリアルだったりすると、その先に展開されるフィクションがすっかり白けてしまう。

ナニワ金融道は良かったねぇ、あれは金を借りる側の人間の弱さ、窮地に立たされた人間の強さ、あと、それまで知ることのなかった闇金のリアルがない交ぜになって、普通だと絶対手にしないような作画の作品を思わず読まされちゃった。
カイジは実は微妙なんだけど個人的には合格。だって、あそこまで馬鹿馬鹿しい設定に溢れてると、逆になんだかお祭り気分でいろんな事が許せてしまう。ゴルゴ13と同じような受け止め方かな?ある意味様式美が成立してた気がする。
で、そういうコンテキストで語ると、野球をネタにしたカイジに似たアニメは本当に駄作。駆け引きの面白さをテーマにしたいなら、その駆け引きへの導入から大切にして欲しいものだ。プロで仕事をしている人間に対するリアリティが無さ過ぎたり、登場人物がいきなり社会批判してみたり、もぅ、テレビからしか情報を得てない中学生がシンナー吸って脚本書いたんちゃうんかと思うよねw

あと、サラリーマンを題材にするのも、かなり難しい。まず多人数に共感を得られる共通のリアルを探し出すのが難しいし、作者がそういう世界を経験してないと得られない体験が多いから尚更。必然的に島耕作みたいな正義感の解り易さだったり、つりバカ日誌みたいな社員としてはダメでも人間性が憎めない・・・的な既にサラリーマンじゃなかったり、といった底の浅いリアリティにしか立脚できない。
現実のみんなは、それなりに日々を楽しく生きてるのにねー

国家公務員一種のリアルとか、もう、フィクション無しでも絶対面白い世界だと思うんだけど、誰も書けないよね?絶望官僚さんさんとか、本書いてくれないかなぁ〜フィクションで良いのでw
マスコミと政治主導の官僚叩きが横行してるせいか、就職希望者も減ってるらしいけど、あそこは絶対面白いと思うよ。
特に景気の悪い今は -地位が安定してるからではなくて- 社会を根本から元気にする新しい手段を模索できる、やりがいのある職場だと思うなぁ。

という記事を2008年に書いて下書きに保存していたのでうp